2009年4月25日土曜日

レコード屋はもう無理だと思った訳 part2

iTunes Storeが始まった時に見えた新しい世界。

ミュージシャンとアーティストがダイレクトにつながり、アーティストは自分のペースで曲を自由に発表していく。アルバムというフォーマットは無くなって、アーティストによってはブログのように毎日曲を発表したり、ツアーの音源を全部ライブの翌日に売り出したりする。自分が曲を買うという行為が直接アーティストをサポートするという意識になり、アーティストと受け手の濃い関係が生まれる・・・とそんな感じ。

で、当時プリンスとかトッド・ラングレンとかピート・タウンゼントとかはそういう未来が来たんだと思っていたろうし、そういうような発言をしていたような気がする。

で、それから7年ほど経ってどうでしょう?そういう未来になったかと言うと結果としてなりませんでした。たぶん今後しばらくはならないでしょうというのが現時点での結論かな?

それはやはりmp3では生計が立たない→CDというフォーマットを捨てることは出来ないという音楽業界の構図が、それをさせなかったと見るべきなのかもしれない。なぜCDというフォーマットが捨てられなかったのかというとそのCDで音楽を流通されるという構造の中で生計を立てている人が多すぎるから。CDが2800円の消費税で2940円としてその中に含まれる利益でどれだけの人間が生活してきたのかと考えると、

アーティスト、ミュージシャン、プロデューサー、ミキサー、マスタリング技術者、スタジオ経営者、マネージャー、レーベル、レコード会社、A&R、ジャケットデザイナー、スタイリスト、フォトグラファー、著作権管理者から卸業者、プレス工場、運搬業、レコード屋、音楽ライター、それらの経理、アマゾンのCD部門で梱包のアルバイトをしている人まで・・・と、ものすごい数の人たちが2940円のCDが売れることの利益の中で生計を立ててきた。でも、よく考えてみれば、



CDもレコードも音源を遠くに届けるための器でしかないんだよね。



アメリカのオハイオでギター一本で弾き語りしている奴の作った歌が日本のリスナーである俺の目にとまって手元に届く間にいろいろな人の手を得ないと届かないという時代がずっと続いてそれが音楽産業となった。産業となったからにはそれを大きくしていくというのが資本主義社会の原理だったけど、ある日それが突然、パソコンでダイレクトに簡単になりましたよとなった時に、今までその産業の中で生き続けている人たちをどうするんだよというのが有ったんだと思う。「タイタニック号」だと思っていたらいつの間にか「たこフェリー」になっていたら、それは必要ないと思われている所(ビートバップレコードのような海外買付の中古レコード屋とか)から乗船拒否されてしまうか、船上からこぼれ落ちてしまうというのは当たり前と言えば当たり前の話ですよ。

ちょっと話を変えてみると、

150円のシュークリームを売っているお店がおいしいというので評判になって、買いたいという人が毎日並んでも買うようになったので、量産出来るようになって、それでもまだ追いつかないのでもっと人を雇うようになって、生産工場を作ったりして、それでも売れるのでさらに支店を増やして、扱う金額がでかくなったので経理をやってくれる人たちも雇って、いろいろ面倒なことも多いので税理士も ・・・・という感じでどんどん大きくなっていくのは別に問題は無いのだが、

「うちはもう10個で3000円の焼き菓子の詰め合わせでやっていくんで。もう生産工場も静岡県と群馬県と福井県に出来てるし、そこでバンバン作ってますよ。で、来年もうひとつ工場作ろうかなと思ってるし。楽天とかでご当地グルメとかで売ってるとかが最近売れてる?あぁ、でもネットで商品買っても、支払して届くまで3~4日待つんでしょ?そういうのって目新しさだよね。ゆくゆくあきられていくんじゃないの?うちはさ、もう昔からこれでやってきてるしね、全国のダイエーでも西友でもどこでもうちの商品は手にはいるしね。これからもバンバン売ってきますよ。」←こっちが今の音楽業界で、今、いくらおいしいと評判になっても、日持ちもしなくて運ぶ時も気をつけないと型崩れしてしまう150円のシュークリームのことを商売として考えることはもう出来ないというのが現状であろう。

自分が2940円のCDを買う時には「こんな素晴らしい音楽を作っていただきありがとうございます」という気持ちとしてその音楽を作った人に2940円を払っていたつもりだったけれど、実はその音楽がCDという器に乗って自分の所に来るというシステムに対して2940円(のほとんど)を払っていたんだよね。それがiTunes Storeが出来た時にその構造が崩れそうになって、焦る人たちがたくさん出てきたと。

で、ついでに言うと、音楽の不法なダウンロードとかをRIAAとかJASRACが告発する時に受け手に反発されるのは、「不法なダウンロードをしてアーティストが文句を言うのはわかる。お前らがアーティストの権利を代表して守ってるというのも知ってる。だけど、俺はアーティストの作った作品にお金を払ってきたつもりはあるけど、お前らにお金を払った覚えはない。なんで曲を作った訳でもないお前らに文句を言われなければならねぇんだよ」という気持ちが出てくるからだろう。

iTunes Storeが出る前にはそこに対して人はあまり考えることになかった。Mp3時代になって、昨日オハイオでギターの弾き語りをした奴の曲を今日ダウンロードして聞けるのが可能なのに、なんで、ほとんどの音楽はここに届く間に多くの人の手と手間を経ないと駄目なんだよという、音楽流通の構造の不毛さが露呈してきてしまった。気づいてしまった。これこそ音楽業界が一番恐れているし、だから結局、アーティストと受け手がダイレクトにつながって、音楽を買うという行為がアーティストを直接サポートにすることにならなかった一番の要因なのだろう。

(さらに続く)